- M&Aの相談窓口で聞いておきたい内容としては「M&Aをそもそも行うべきか」「売却価格の目安はいくらか」などがある
- 相談先としては税理士や弁護士、M&A仲介会社のほか、商工会議所などの公的機関にも相談できる
- M&Aの相談先を選ぶ際には「M&A支援サービスが手厚いか」「M&Aの実績が豊富か」などを確認すると良い
なお、M&Aの相談先は多数存在しており、自社の業界に強い業者とそうでない業者が混在しています。
そのため、どの会社に相談するのかでM&A成功や売却額に大きく影響しやすいことから、複数の会社で見積もりをとってみるのがおすすめです。
M&Aの相談窓口で聞いておきたい内容
以下では、M&Aに関して相談窓口で聞いておきたい内容を売り手側・買い手側のそれぞれの視点から紹介します。
売り手側
売り手側の相談しておきたい内容は以下の通りです。
そもそもM&Aを行うべきか
M&Aの相談窓口で、そもそもM&Aを行うべきかどうかについて聞くことができるでしょう。M&Aにはメリットとデメリットがそれぞれあるため、両方について検討して決定する必要があります。
M&Aを行うべきかどうかは、達成した目的によって異なります。例えば、経営者が引退を希望している場合や後継者が身近で見つからないといった場合、M&Aは適切な手段である可能性が高いと言えるでしょう。
一方事業の成長を望んでいる場合、取ることのできる手段はM&A以外にも複数あります。
M&Aについて相談する際には、まずM&Aによって達成したい目的をはっきりさせておく必要があるでしょう。
私が力になりにくいなと思った顧客は、抽象度が高すぎる意欲や、企業の情報が全く分からないときです。「なんか良い会社持ってきて」といった相談や、企業情報を開示したくない状況の時はM&Aという選択が向かないことの方が多いと感じます。
売却価格の目安はいくらになるか
M&Aの相談窓口では、会社や事業の売却価格の目安について相談することが可能です。
M&Aの際の売却価格は買い手と売り手の交渉によって決まるため、相談段階で精密な見積もり価格を教えてもらうことは難しいと言えるでしょう。
しかし、M&Aの際の売却価格を概算によって計算する方法は複数あり、売却価格の目安を教えてもらえる可能性は高いでしょう。
M&Aの売却価格の目安について教えてもらうためには、会社の売り上げ、営業利益、純資産といった数値が必要となります。
売却価格の目安について知りたい場合、こうした数値について確認しておく必要があるでしょう。
注意点として売却価格の見積もりは、実施する人やタイミングによってばらつきが出る場合があります。
できるだけ高い価格で自分の会社を売りたいと思っている場合、複数の業者に見積もりを依頼することをおすすめします。
その際M&A一括見積もりを利用することで、まとめて複数の業者に見積もり依頼をすることができるため、便利です。
決算書3期分の資料については、あった方がいいです。決算書3期分が譲渡金額の基礎となる情報なので、決算書が無かった場合、話が進まないことがあります。
M&A後の自身・従業員の処遇
M&A後の自身・従業員の処遇について、M&A相談窓口に相談しておくことができます。
M&A後に経営者や従業員の処遇がどうなるかは、M&Aの際に使用するスキームや契約内容によって異なります。
自身も働き続けたい、従業員を引き続き雇用してほしいなどの希望がある場合には、その旨も併せて相談することをおすすめします。
選択すべきM&Aのスキームなど、希望を叶えるために取れる手段について、教えてもらうことができるでしょう。
M&Aの流れと必要期間
M&Aの流れと必要期間について、M&A相談窓口に相談しておくことができます。
多くの方がM&Aを初めて実施することになるでしょう。事前にM&Aの流れを把握しておくことで、気持ちに余裕を持ってM&Aに望むことができます。
また、M&Aに必要な期間は数ヶ月から1年以上かかる場合もあります。必要期間を把握しておかないと、希望するタイミングでM&Aを完了できない可能性があります。
買い手側
M&Aの買い手側がM&A相談窓口で相談しておきたい内容には、以下のものが挙げられます。
- M&Aの必要性や効果に関して
- 買取にかかる資金の準備に関して
- 買取に必要な手続きや準備に関して
- M&Aにかかる期間に関して など
とりわけM&Aには多額の資金が必要となると予想されるため、掛かる資金の概算や準備方法については、相談したいと考える方が多いでしょう。
M&Aの相談先をメリット・デメリットと共に紹介!
以下では、M&Aに関する相談ができる相手・機関について紹介します。
税理士・公認会計士
税理士・公認会計士は、それぞれ税務・財務を取り扱う会計のスペシャリストです。
税理士・公認会計士にM&Aについて相談するメリット・デメリット
相談先 | 税理士・公認会計士 |
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メリット | 財務・税務に関する知識が豊富 |
デメリット | M&A自体には詳しくない可能性がある |
税理士・公認会計士は、M&Aの際に必要となる税務や財務に関する知識が豊富です。そのため、M&Aを行った際の財務面での効果などについて相談することができるでしょう。
しかし、全ての税理士・公認会計士がM&Aに詳しいわけではありません。相談前に、M&Aに関する実績があるかどうか確認することをおすすめします。
なお、ここでいうM&Aの相談先としての税理士・公認会計士とは、自身の顧問先や担当をしてくれている税理士・公認会計士ことを指しています。
税理士は、税務の他に企業や経営のことを相談された際には、ある程度のことが応えられる知識と経験を有しています。そのため、明確な回答が返ってこなくとも、解決の糸口となることも多くM&Aについても似たような形になると思います。
弁護士
M&Aについて弁護士に相談することが可能です。
弁護士にM&Aについて相談するメリット・デメリット
相談先 | 弁護士 |
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メリット | 法的な面のサポートが可能 |
デメリット | 財務など詳しくない分野がある |
弁護士には、M&Aに関わる法的リスクについて相談することができます。M&Aには様々な法務リスクが関係するため、弁護士のサポートが欠かせません。
しかし弁護士によっては、財務や税務、もしくはM&A自体に詳しくない可能性があります。そのため、相談する前にM&Aに対応している弁護士・事務所かどうか確認する必要があるでしょう。
なお、弁護士は弁護士法によりM&A仲介業を行えないとされています。M&Aに関する法務リスクを確認したのち、M&A仲介業者の知り合いがいないかを尋ねてみると良いでしょう。
M&Aの相談先として弁護士がおすすめなのは、M&Aに関係する法律について不安感を持っている人です。
M&A仲介会社
M&A仲介会社とは、買い手と売り手の間に立ち、M&A取引を円滑に進めるためのサポートを専門的に行う会社です。
M&A仲介会社にM&Aについて相談するメリット・デメリット
相談先 | M&A仲介会社 |
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メリット | M&A全般に詳しい |
デメリット | M&Aにおいては中立の立場を取る |
M&A仲介会社は、M&Aの専門家であり、多くの知識やノウハウを持っています。相談者と似た状況で行われたM&Aの仲介を行った経験を持つ可能性もあるため、相談相手として適任でしょう。
しかしM&A仲介会社は、買い手と売り手双方から依頼を受けるため、どちらか一方の利益のみを考えて動くことは基本的にありません。
そのため、必ずしも自社にとって最大限の利益となるようなアドバイスをしてくれるわけではない点に注意が必要です。
M&Aの相談先としてM&A仲介会社がおすすめなのは、相談後ワンストップでM&Aのサポートを依頼したい人です。
M&Aアドバイザリー会社(FA)
M&Aアドバイザリー会社(FA)とは、M&Aに関するアドバイスなどM&Aのサポートを専門的に行う会社です。
M&Aアドバイザリー会社(FA)にM&Aについて相談するメリット・デメリット
相談先 | M&Aアドバイザリー会社(FA) |
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メリット | 依頼主の利益を最大限に考えてくれる |
デメリット | 知識や経験のあるアドバイザーを選択する必要がある |
買手売手の交渉を一括して行うM&A仲介会社とは異なり、売手か買手の片側にのみ付くM&Aアドバイザーは、クライアント側の立場に立ってM&Aに関するサポートを行ってくれます。
注意点として、M&Aアドバイザーは、国家資格の様に名乗るために必須の資格などはありません。そのため、相談先としてM&Aアドバイザーを選ぶ際には、信頼できる相手かどうか見極める必要があります。
M&Aアドバイザーを選ぶ際には、実績や口コミなどを確認することをおすすめします。
M&Aの相談先としてM&Aアドバイザリー会社(FA)がおすすめなのは、M&Aの専門家から詳しいアドバイスをもらいたい人です。
業界の慣例として、譲渡対価が10億未満の場合はM&A仲介会社、10億以上の場合はFAに依頼すると最も効率的だと思います。
商工会議所
商工会議所とは、中小企業のサポートなどを行う組織です。
商工会議所にM&Aについて相談するメリット・デメリット
相談先 | 商工会議所 |
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メリット | 最寄りの商工会議所で無料で相談できる |
デメリット | M&Aのマッチング相手が所属地域内に限られる場合がある |
商工会議所にM&Aに関する相談を行うためには、入会費や年会費を払い、会員となる必要があります。
会員であれば、M&Aに関する相談を無料で行うことができ、商工会議所が提携する専門家の紹介を受けられる場合もあります。
しかし商工会議所はM&Aの専門家ではないため、M&Aサポートをワンストップで依頼することは難しいと言えるでしょう。
加えて、商工会議所は地域ごとに独立した組織であるため、M&Aマッチング相手として他地域の企業を紹介してもらうことも難しいです。
商工会議所会員の企業・人は、商工会議所にM&Aの相談をしてみることをおすすめします。
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターとは、零細・中小企業の事業継承に関する相談に対応する国が設置する公的相談窓口です。
事業承継・引継ぎ支援センターにM&Aについて相談するメリット・デメリット
相談先 | 事業承継・引継ぎ支援センター |
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メリット | 国が設置する機関であるため安心感を持って相談できる |
デメリット | 認知度が比較的低くマッチングしない場合もある |
事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置する相談窓口であり信頼がおける相談相手と言えるでしょう。相談や事業引き継ぎ支援の実績も年々伸ばしています。
しかし令和4年度の事業引き継ぎの実績は約1,700件(※)と民間のM&A支援機関と比較して、少なめです。利用者が多くないため、マッチング相手の候補が少ない可能性があり注意が必要です。
(※2024年5月執筆時点 公式サイトに記載)
事業承継・引継ぎ支援センターは、M&Aに関する相談のセカンドオピニオンとして活用することがおすすめです。
銀行・証券会社
銀行や証券会社にもM&Aの相談をすることが可能です。
銀行・証券会社にM&Aについて相談するメリット・デメリット
相談先 | 銀行・証券会社 |
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メリット | 独自の顧客ネットワークの情報網がある |
デメリット | 手数料が割高な場合がある |
銀行・証券会社といった金融機関は独自の顧客ネットワークの情報網が豊富で、M&Aに関する相談先に適していると言えます。
普段取引している銀行に相談する場合、自社の経営状況に関しての理解があるため、相談がスムーズに行えるというメリットもあるでしょう。
しかし、銀行・証券会社は中小企業のM&Aに対応していない場合があるため注意が必要です。M&Aのサポートを大手企業向けに展開しているために手数料が割高に設定されている、という場合もあります。
銀行・証券会社を普段から取引相手としており、信頼関係がある人は、M&Aに相談することをおすすめします。
M&Aの相談に料金はかかる?
M&Aの相談は基本的に無料で行うことができます。多くのM&A支援機関が、相談を無料で受けてくれます。
しかし、相談料として数千円〜数万円程度の料金が設定されていることがあるため、確認が必要です。また、商工会議所のように、相談するために入会費や年会費が必要となるケースもあります。
M&Aの相談先を選ぶ際のポイント
自身の希望するM&A支援サービスを提供しているか
M&Aの相談先を選ぶ際、自身の希望するM&A支援サービスを提供しているか確認することをおすすめします。
M&Aに関する相談を受け付けている専門家や仲介会社には、それぞれ得意分野があり、提供するサービスも様々です。
自分の希望するM&A支援サービスを提供している相談先であれば、相談後そのままM&A手続きを依頼できる可能性があります。
料金が明確で納得感があるか
M&Aの相談先を選ぶ際には、料金が明確で納得感があるか確認しておくことをおすすめします。M&Aの相談は無料でできる場合が多いですが、ほとんどの場合その後のM&A支援には手数料がかかります。
かかる可能性のある手数料の種類として、以下のものがあげられます。
- 着手金
- 月間報酬
- 中間報酬
- 成功報酬
料金が明確に提示されている相談先であれば、想定外の費用が生じることがなく、安心感を持って相談やサポートの依頼ができるでしょう。
また、手数料の最低報酬額が設定されている場合もあります。M&Aの売却金額によっては手数料が割高となってしまうケースもあるため、注意が必要です。
自社の業界や相談内容に専門性があるか
自社の業界や相談内容に専門性があるか確認して相談先を選ぶことをおすすめします。
M&Aは複雑な手続きであり、関係する会社の業界や業種、企業規模によって必要な知識やノウハウが異なる場合があります。
M&Aの相談先を選ぶ際には、自社の業界の企業の支援実績が豊富かどうか確認すると良いでしょう。
また、M&Aに関わる税務について相談したい、など相談内容が具体的に決まっている場合は、その内容に詳しい専門家を選ぶなら、求める答えが得られやすいでしょう。
M&Aの実績が豊富か
M&Aの実績が豊富か確認して相談先を選ぶと良いでしょう。
M&Aの実績が豊富であれば、必要な知識やノウハウを持っていることを期待できます。
加えて、自社に似た状況のM&Aを支援した実績を確認できれば、より安心感を持って相談できるでしょう。
M&A仲介会社の多くが公式サイトにて、M&Aの支援実績を公開しています。相談先を選ぶ際に参考にすることをおすすめします。
担当者がスピーディに漏れなく対応してくれるか
担当者がスピーディに漏れなく対応してくれるかどうかはM&Aの相談先を選ぶ際のポイントと言えます。
M&Aの手続きには数カ月以上の長い時間がかかります。担当者がスピーディに対応してくれるなら、M&A手続きをスムーズに進めやすいです。
もし相談の初期段階で、担当者の対応が遅かったり、情報伝達に漏れがあったりするなど、不安に感じる点が見つかるなら、相談先を変えることを検討するのが良いでしょう。
情報漏洩の心配がないか
情報漏洩の心配がないか確認することが、M&Aの相談先を選ぶ際に重要なポイントです。
M&Aに関する相談をする際には、会社の重要な情報を伝える必要がある場合があります。また、M&Aを検討しているという情報自体、漏れると不利益が生じることのある大切な情報です。
こうした重要な情報が漏れてしまうことのないよう、信頼できる相談先を選ぶことは大切です。秘密保持契約を締結してくれるなど、情報管理を徹底しているかどうか確認することをおすすめします。
M&Aの相談をする流れ
M&Aに関する相談をする流れについて、㈱日本M&Aセンターを例に紹介します。
- 必要事項を入力し相談を申し込む
- 対面もしくはウェブミーティングによる面談
- アドバイザリー契約を締結しM&A手続きを開始する
面談の際には、M&Aの目的や事業内容について伝えます。M&Aが必要ということになれば、簡易的な企業評価を実施してもらったり、M&Aスキームについて相談したりすることになります。
納得感が得られ、M&Aを実施することが決まれば、アドバイザリー契約を締結し、M&A手続きが開始されます。
また、M&Aセンターでは、M&Aの相談を無料で行えます。
M&Aの相談をする際の注意点
不信感がある場合は相談を避ける
不信感がある場合はM&Aの相談を避けたほうが良いでしょう。信頼できる相手でなければ、M&Aのサポートを依頼することはできないためです。
不信感が生じてしまう原因として、以下のものが考えられます。
- 知識が少ない
- 実績が少ない
- 対応に誠実さが感じられない
このような相手にM&A支援を依頼しても、M&Aを成功させられる可能性は低いと言えるでしょう。このような場合には、相談先を変える、相談を避けるといった対策が取れます。
情報はできるだけ表に出さない
M&Aの相談をする際、情報はできるだけ表に出さないよう注意が必要です。M&Aの相談をした相手に、そのままM&A支援を依頼するとは限らないためです。
多くの場合、秘密保持契約(NDA)の締結はアドバイザリー契約締結時となっています。相談段階ではNDAを締結していない場合が多いため、情報漏洩のリスクがあると言えます。
そのため、相談段階では会社の機密情報など大切な情報を守る必要があると言えるでしょう。
近年ルシアンホールディングスという大きな事件・裁判にも発展する事例が増えてきていますので信頼できるところとM&Aを進めていきましょう
相談相手は少数にする
M&Aの相談相手は少数にすることをおすすめします。
M&Aを検討していること自体、あまり多くの相手に知られない方が良いと言えます。取引先に誤った印象と共に伝わり、取引が中止されてしまうなどのリスクがあるためです。
M&A相談に関するよくある質問
大手のM&A仲介会社は中小企業に親身になってくれない?
大手のM&A仲介会社は、中小企業に親身になってくれる場合が多いと言えるでしょう。
多くのM&A仲介会社の支援対象に中小企業は含まれています。
ただし、中には最低報酬金額が定められているM&A仲介会社もあります。規模の小さな会社にとって、手数料が割高となってしまうケースもあるため、注意が必要です。
そのような場合、「TRANBI」のような個人や中小企業を主な顧客とするM&A仲介サービスの利用がおすすめです。
無料で相談できるM&Aの相談先は?
M&Aの相談は無料でできる場合が多いです。M&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社のほとんどがM&Aに関する相談を無料で受けてくれます。
さらに、国が設置する相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターでも無料で相談できます。
銀行でM&Aの相談は可能?
銀行にM&Aの相談をすることは可能です。M&Aアドバイザリー業務を行うチームを設立している銀行もあります。
銀行にM&Aの相談をすることで、事業の融資に関することなどM&A成約後も中長期に渡って支援を受けられる場合があります。
ただし、対応している銀行としていない銀行がありますので、相談前に確認しておくことをおすすめします。