- 不動産M&Aは不動産の獲得を目的とし、不動産を保有する企業・事業を買収する手法
- 不動産M&Aは従業者の高齢化や後継者不足、不動産事業の拡大需要から増加傾向にある
- 不動産M&Aは買主・売主の双方にとって節税効果が期待できる
- 不動産M&AにはM&Aの知識のみでなく不動産の専門知識が必要
- 不動産領域を得意とするM&A仲介業者に相談することがおすすめ
なお、M&A仲介サービスを提供している仲介会社は複数存在し、得意とする分野・業界も会社によって異なります。
M&Aが成功するかどうかは仲介会社によって大きく左右されるため、複数の仲介会社で見積もりを取り、比較・検討することが重要です。
忙しく複数の仲介会社で見積もりを取る余裕がない場合は、M&A仲介会社の一括見積もりサービスの利用をおすすめします。
不動産産業界の基本情報やM&Aの現状・件数を紹介
不動産業界の基本情報やM&Aの現状を以下で紹介します。
※本記事では税金に関する内容の記載がございますが、一切の責任を負えません。税務相談に関しては、税理士法第2条に基づき、税理士などの専門家に必ずご相談ください。
不動産業界の基本情報
不動産業界は、「土地や建物、その他土地に定着する工作物」と定義される不動産に関わる業務を行う業界です。
不動産業界の代表的な企業として、三井不動産や飯田グループホールディングスが挙げられます。
不動産業界には具体的に以下の業務が含まれます。
- 開発:不動産の開発・分譲
- 流通:不動産売買・仲介
- 賃貸:不動産の賃貸し
- 管理:土地や建物の管理
不動産業界の役割としては、デベロッパーまたはゼネコン、ハウスメーカーが土地および建物の設計や建築、施行を行います。
その後の流通の役割として、不動産仲介会社等が土地や建物を消費者に販売または賃貸しします。そして、その土地や建物の管理やメンテナンスを不動産管理会社が行います。
不動産業務を行う法人の総売上高の推移と法人数の推移および全産業法人数に占める割合を以下の表にまとめました。
年 | 不動産業の売上高 | 不動産業の法人数 | 全産業法人数に占める不動産業の割合 |
---|---|---|---|
2017年 | 43.4兆円 | 328,553 | 11.8% |
2018年 | 46.5兆円 | 337,934 | 12.0% |
2019年 | 45.4兆円 | 347,791 | 12.3% |
2020年 | 44.3兆円 | 353,448 | 12.4% |
2021年 | 48.6兆円 | 368,552 | 12.8% |
上記の表から、不動産業界は比較的順調にその規模を拡大させていると言えるでしょう。
不動産業界M&Aの現状
不動産業界M&Aの件数は増加傾向にあります。
以下にM&A Onlineのデータベースに記録されている不動産業界M&Aの推移をまとめました。
2018年 | 40件 |
---|---|
2019年 | 56件 |
2020年 | 67件 |
2021年 | 64件 |
2022年 | 54件 |
2023年 | 80件 |
出典:M&A ONLINE
上記の表から、2018年から2023年の5年間で不動産業界M&Aの成約件数は2倍になっています。
不動産業界でM&Aが増えている要因として以下のことが考えられます。
- 不動産従業者の高齢化
- 後継者の不足
- 不動産企業の業務拡大
- 不動産企業のエリア拡大
総務省が実施している国勢調査を見ると、不動産従業員の高齢化は他の業界と比較しても深刻な状況になっています。
そのため、従業者の高齢化や後継者不足への対応策としてM&Aを検討する企業が増えていると考えられます。
また、既に不動産業務を行っている企業が業務拡大やエリア拡大を目的にM&Aを行うケースも増えていると考えられます。
以上のことから、今後も不動産業界のM&Aは活発化していくと考えられます。
私が見た中では、各都道府県にある地方の大きい不動産屋が後継者不在により事業承継でM&Aを選択するケースがこれからも増えるように考えています。
不動産M&Aとは?一般的なM&Aとの違いや注目されている理由を解説
不動産M&Aとは、不動産の取得を目的として、不動産を保有する事業を買収する手法です。
以下では、一般的なM&Aの違いや不動産M&Aが注目されている理由を解説します。
不動産M&Aとは
不動産M&Aとは、前述した通り、不動産の取得および譲渡を目的として不動産を保有する企業を売買する手法です。
一般的なM&Aでは、買収予定の企業が持つ事業や人材、技術、情報などの経営資源を承継することを主な目的として企業を売買します。
また、不動産M&Aは一般的な不動産売買とも異なります。不動産売買の場合は、法人または個人が保有する不動産の所有権のみを取引します。
不動産M&Aは、多くの場合で不動産業界の企業同士で実施される傾向にありますが、不動産業界以外の企業が不動産M&Aで不動産を取得するケースもあります。
例えば、京王電鉄株式会社は2021年秋に新築分譲事業を中核事業として行う株式会社サンウッドとM&Aによる資本業務提携を発表しました。不動産M&Aの事例詳細についてはこちらをご覧ください。
多くの不動産M&Aでは節税効果の高さからその手法がとられていますが、明らかに節税を目的とした不動産M&Aの場合、税務調査が入ってくる可能性があるので専門家の意見を聞くことを推奨します。
不動産M&Aが注目される理由と背景
不動産M&Aが注目される理由や背景として以下のことが考えられます。
- 売主・買主の双方で節税になる
- 不動産ではなく現金で相続できる
- 不動産と事業を切り分けられる
不動産M&Aによって不動産を売却・譲渡した場合には、不動産の所有権を売買した時と比較して、税負担が軽くなる傾向にあります。
例えば、不動産を売買した場合、売主側には売却で生じた利益に対して法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税などが課せられ、買主側には不動産取得税として、固定資産評価基準に基づいて決定された不動産評価額に対し3%~4%の税率をかけた税額が課せられます。
一方、不動産M&Aによって不動産売買をした場合には、買主側は一般的に課税されません。売主側には株式譲渡益に基づいて算出された申告分離課税が課されますが、不動産売却時の所得よりも少ない税率で計算されます。
また、最近の傾向として、家業を承継せずに不動産ではなく現金での相続を好む人が多い点も不動産M&Aの増加につながっています。
さらに、法人が所有する不動産とその他の事業を切り分ける手段としても不動産M&Aは注目されています。
大きな違いで言えば、買いたい会社の探し方が大きく異なります。不動産売買で言えば、不動産業界のデータベースを使いますが、M&Aによる場合は企業のM&Aニーズからマッチングしていきます。
その他、不動産事業に従業員を雇用している場合には、不動産M&Aの方が従業員の雇用も継続されるので良いでしょう。
不動産M&Aのスキームを紹介
不動産M&Aには、不動産を保有する企業の株式を譲渡する場合と、不動産と事業を切り離して会社新設と株式譲渡を行う方法があります。
以下ではそれぞれのスキームについて詳しく解説します。
株式譲渡の場合
不動産M&Aのスキームとして、買主側が売主側の企業の株式を買収して、法人ごと不動産を取得し、対象企業を子会社化する方法が挙げられます。
株式譲渡によるM&Aは、一般的なM&Aの手順と同様です。
子会社化された企業は、買主側との取り決め次第では事業を継続することができ、従業員もそのまま雇用継続できる可能性があります。
ただし、収益性が見込めない事業だと判断された場合には不動産の所有権が移行した後に会社清算となるケースも少なくないでしょう。
不動産M&Aの多くは、事業継承ではなく不動産の取得を目的としているため、M&Aによる統合後に解散となる可能性があることも念頭に置いておきましょう。
不動産譲渡のスキームについては、契約内容や不動産譲渡の諸条件によって適正なものは異なります。様々なスキームが選択可能な状況の場合は、節税効果が高いスキームを選択することができます。
会社分割の場合
不動産M&Aのスキームとして、従来の事業から不動産および不動産に付随する事業を切り離した会社を新設してM&Aを行う会社分割の方法があります。
つまり、このスキームでは会社分割と株式譲渡の2つを行います。
会社分割を含む不動産M&Aの場合は、不動産および不動産関連事業を新設分割し、その新設会社の全株式を買主企業に譲渡します。
上記の手順を踏んだ場合には、売主企業は原則的に組織再編税制の特例措置を受けることが可能です(法人税法第2条第12の11号、第62条の2、第62条の3、法人税法施行令第4条の3第6項)。
これにより、原則的には課税が生じることなく不動産を新設会社に譲渡することができます。
そのため、不動産事業以外の本業は継続して不動産のみを売却したい場合には、不動産自体を売却するよりも不動産M&Aのスキームを利用する方が節税になると言えるでしょう。
ただし、新設会社を買主企業に株式譲渡する際には申告分離課税が発生するため、全てが非課税なわけではありません。
また、会社分割による不動産譲渡でも要件を満たしていないと判断された場合には不動産所得税が発生する可能性もあります。
なお、平成29年税制改正で分割型分割における税制適格要件が修正されたことに伴い、不動産M&Aにおいては分割型分割が選択されるようになりました。
会社分割の場合、不動産まわりの事業のみを切り分けがしやすいことにメリットがあるので、手続きの簡易化が大きなメリットです。私の知る限り、親子会社間の譲渡などに用いられるイメージです。
不動産M&Aと不動産売買の違いは?税金・費用面を比較
不動産M&Aと不動産売買では、発生する税金や費用で違いが生じます。
以下では、それぞれのスキームで発生する税金・費用について解説します。
不動産M&Aで発生する税金
株式譲渡の場合
株式譲渡による不動産M&Aの場合に発生する税金は以下のとおりです。
買主側 | 売主側 |
---|---|
特になし | 株式譲渡益に基づいて算出された申告分離課税(20%) |
申告分離課税の内訳は所得税が15%、住民税が5%になっています。
株式譲渡益とは、株式譲渡によって得られた金額から取得費や委託手数料含む経費を引いて残った金額のことを指します。
つまり、株式譲渡による不動産M&Aを行った場合、買主側への課税は特になく、売主側へは株主譲渡で得られた利益の約20%が申告分離課税として発生します。
株式譲渡の金額は、M&Aの最終契約締結前に買収監査を実施して算出します。
一般的には売主企業が会社清算をした際に見込まれる残余財産額とおおよそ同額分が株式譲渡の金額となります。
そのため、不動産M&Aの株式譲渡による金額と不動産を売却し負債を清算した金額は税金を考慮しない場合は同程度になると言えるでしょう。
ただし、不動産のみを売却した場合には株式譲渡よりも高い税率が課せられる傾向にあります。詳しくは後述します。
不動産に関連する負債や取得原価によって、譲渡益がいくらになるかは個人と法人によって異なります。
一つの目安として2,000万以上の譲渡益がでるのであれば、法人による売却を行った方が良いでしょう。
会社分割の場合
会社分割による不動産M&Aの場合には、会社分割に対する税金と株式譲渡に対する税金が発生します。株式譲渡に対する税金は上述した通りです。
会社分割には以下の税金が発生します。
分割元会社 | ・継承される事業の譲渡損益に対する法人税 ・譲渡益を株主に交付した配当所得に対する所得税 |
---|---|
新設会社 | 不動産所得税 |
会社分割をする際には、分割元の会社は事業承継した際の譲渡損益に対する法人税(法人税法第62条)や、譲渡益を株主に交付した場合に発生する配当所得に対する所得税(所得税法第25条)
が発生します。
そして、不動産及び不動産に付随する事業を承継した新設会社は不動産所得税(地方税法第73条の2)が課せられます。
しかし、これらの税金は組織再編税制の適格要件を満たして会社分割していると判断された場合には、特例措置として上記の法人税、所得税および不動産所得税は課税されません。
ただし、会社分割が租税回避を目的とした行為だと見なされた場合や承継する不動産の大部分の所有期間が5年未満だった場合に短期所有土地の譲渡と見なされて特例措置を受けられない場合があります(※所得税30%+住民税9%が課される可能性があります)。
組織再編税制の適格要件を満たしているかを判断するためには、専門的な知識が必要となるため、不動産業界に精通しているM&A仲介業者に相談するようにしましょう。
M&Aの一括見積もりができるM&A相談窓口を利用すると、不動産業界を得意とする適切な仲介会社を見つけることができるでしょう。
不動産売買で発生する税金
不動産売買では、不動産M&Aとは異なり事業は継続したまま不動産の所有権のみを売買します。
不動産売買で発生する税金は以下のとおりです。
買主側 | 売主側 |
---|---|
不動産評価額に対する不動産取得税 | ・譲渡益に対する法人税 ・譲渡損益に対する住民税 |
不動産売買を行った場合には、買主側は取得した不動産の評価額に3〜4%の税率をかけた不動産取得税が発生します。
また、不動産の売主側は売却額から必要経費などを差し引いた際に譲渡益がある場合には、総税率約30〜34%の法人税および住民税が課せられます。
さらに、税金を差し引いた譲渡益を株主に配当する場合には、株主に対して超過累進税率による所得税も発生します。
不動産の売却後、買主側は取得した不動産の所有権移転登記手続きを行う必要があり、そこでも登録免許税が発生します。
上記のことから、不動産の売買は不動産M&Aと比較すると課せられる税金が高くなる可能性が高いと言えるでしょう。
不動産M&Aと不動産売買の税金をシミュレーションで比較
不動産M&Aと不動産売買の税金シミュレーションを以下にまとめました。
シミュレーションでは、不動産および株式の譲渡額を500万円と仮定し、譲渡に関わる必要経費は考えないものとします。また、買主及び売主はどちらも法人だと仮定します。
買主側 | 売主側 | |
---|---|---|
不動産M&A (株式譲渡の場合) |
- | 申告分離課税(20%):100万円 |
不動産売買 | 法人税・住民税(30〜34%):150万〜170万円 | 不動産所得税(3〜4%):15万〜20万円 |
上記のシミュレーションは譲渡額が低く、その他費用を含めない単純計算によるものですが、不動産M&Aの場合の方が買主にとって節税になると言えます。
一方で、売主にとって節税にはならないと言えるでしょう。
しかし、不動産売買の場合は事業は継続されるため会社清算などの手続きも必要となり、残余財産がある場合にはそれらに対する法人税なども発生します。
また、利益が大きく超過累進税率が適用された場合は、最大45%の所得税がかかるケースもあります。このような場合は、売り手目線でも不動産M&Aの方が節税になります。
なお、株式譲渡での不動産M&Aが認められず、短期所有土地の譲渡とみなされ、不動産売買時と同様の税金が課される場合もあります。
そのため、不動産のみの売買についても検討材料として残した上でM&A仲介業者に相談すると良いでしょう。
不動産M&Aをすることのメリット・デメリット
売主側のメリット・デメリット
不動産M&Aをする上での売主側のメリット・デメリットを以下で紹介します。
メリット
不動産M&Aをする上での売主側のメリットとして以下のことが挙げられます。
- 節税のより譲渡益の増加が見込める
- 会社清算コストを削減できる
- 登記手続き等にかかるコストを削減できる
- 不動産の流動性を確保することができる
前述したとおり、不動産M&Aによる不動産譲渡は不動産の売買と比較すると譲渡益にかかる税率が低く、結果として株主への手取りが多くなるというメリットがあります。
また、不動産M&Aの場合は、不動産のみでなく事業や経営資産を譲渡することになります。契約次第では従業員の雇用も継続したまま譲渡することができ、会社清算等の廃業コストが発生しません。
さらに、登記手続き等も不要なため、手続きにかかる時間や手数料および税金も節約することができます。
デメリット
不動産M&Aをする上での売主側のデメリットとして以下のことが挙げられます。
- 手続きが煩雑で時間がかかる
- 譲渡先がすぐに見つかるわけではない
不動産M&Aの手続きは、不動産のみの売買と比較すると手続きが煩雑で成約までに時間がかかるというデメリットがあります。
譲渡先を見つけて交渉するまでに、仲介業者の選定や企業価値評価の実施、ノンネームシートの作成など多くのフローがあります。
また、譲渡先の候補が見つかった後もトップ面談や意向表明書の作成、買収監査などさらに多くの書類作成や手続きが必要になります。
ただし、M&Aの仲介業者に依頼した場合には、基本的に仲介業者が中心となって書類作成等をサポートしてくれるため、過度に心配する必要はありません。
また、譲渡先が見つかりにくいという点もデメリットだと言えます。不動産の価値以上に負債を抱えている場合は特に困難になるでしょう。
そのような場合でも、不動産M&Aを得意とする仲介業者にまずは気軽に相談し、M&Aの可能性や売却予想金額の算出をしてもらうとよいでしょう。
買主側のメリット・デメリット
不動産M&Aをする上での買主側のメリット・デメリットを以下で紹介します。
メリット
不動産M&Aをする上での買主側のメリットとして以下のことが挙げられます。
不動産M&Aで不動産を取得する場合は、不動産所得税は原則的に発生しません。通常は不動産を購入する際には3〜4%の不動産所得税が発生します。
また、株式譲渡による不動産の取得のため、前述したとおり登記変更手続き等を行う必要もなく、結果として不動産の所有権を購入するよりも安価に取得できる可能性があります。
さらに、不動産M&Aの場合は企業が売買目的ではなく保有する不動産を得られる可能性があります。売買目的ではないため市場に出回りづらく、買収価格以上の価値を秘めているかもしれません。
デメリット
不動産M&Aをする上での買主側のデメリットとして以下のことが挙げられます。
買主側のデメリットとして、不動産取得までに時間がかかることが挙げられます。
不動産M&Aをする場合には、対象企業の財務状況等を正確に知る必要があり、調査や交渉に多くの時間がかかります。
また、財務状況を正確に把握しないままM&Aを成約すると、後になって帳簿や決済書類に記載されていない簿外債務が発覚する恐れもあります。
そのため、買収監査は慎重に行った方がいいですが、時間がかかればその分コストもかかってきます。
不動産M&Aは、手続き開始から統合が完了するまでに1年以上かかる場合もあるでしょう。
不動産業界の実績が少ないM&A仲介業者に依頼した場合にはさらに時間がかかる可能性も出てくるため、実績と信頼感のある適切な業者に相談することも大切です。
不動産M&Aの過去の事例を紹介
京王電鉄の株式取得による不動産M&A
譲渡企業 | 株式会社サンウッド |
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譲受企業 | 京王電鉄株式会社 |
スキーム | 株式譲渡 |
取引総額 | 4,665百万円 |
京王電鉄株式会社は、2021年11月に株式会社サンウッドの株式公開買付を実施して資本業務提携を行うことを発表しました。
京王電鉄株式会社は、高尾線・相模原線を運行する京王線を運営している大手私鉄企業です。
京王電鉄は2021年以降、不動産事業の領域拡大を図るために、株式会社タカラレーベンが保有する株式会社サンウッドの株式を取得し、資本業務提携契約を締結しました。
株式会社サンウッドは、都心部の富裕層をターゲットとした新築分譲事業を主に展開する企業です。
今回のM&Aにより株式会社サンウッドは京王電鉄株式会社の関連会社となり、不動産開発事業における各フェーズでの協力や京王電鉄沿線の分譲開発、相互顧客への物件情報発信において業務提携が行われます。
また、人事交流によるノウハウの共有や人材育成、新たな共同開発事業の検討など、M&Aによる相乗効果を目指しています。
株式会社スピナの株式取得による不動産M&A
譲渡企業 | アイデムホーム |
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譲受企業 | ハウスフリーダム |
スキーム | 株式譲渡 |
取引総額 | 不明 |
愛知を含む複数個所を中心とした不動産業を展開しているハウスフリーダムが、名古屋市エリアにて不動産業を担っていたアイデムホームを買収し、子会社としました。
このM&Aにより、ハウスフリーダムの中部地方での基盤安定に繋がりました。
その後、ハウスフリーダムはアイデムホームの株式を全て買収したことで完全子会社化を進めました。
ハウスコムの会社分割による不動産M&A
譲渡企業 | 株式会社宅都 |
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譲受企業 | ハウスコム株式会社 |
スキーム | 会社分割と株式譲渡 |
取引総額 | 1,043百万円 |
ハウスコム株式会社は、2020年12月に、株式会社宅都ホールディングスから株式会社宅都の株式を取得して子会社化すると同時に、業務提携契約を締結することを発表しました。
ハウスコム株式会社は、不動産の賃貸仲介やリフォーム事業を中心に全国展開する企業です。
一方、譲渡企業である株式会社宅都は、宅都ホールディングスの完全子会社で、関西を中心に不動産賃貸の仲介業務を展開しています。
株式会社宅都は、今回のM&Aにあたって不動産の賃貸仲介以外の事業を自社のグループ傘下の企業にに会社分割して切り離したのちに、ハウスコム株式会社の完全子会社になっています。
両社は、不動産仲介業務に加え、不動産テック事業に力を入れています。
不動産テックとは、不動産とテクノロジーを組み合わせた造語で、ITやインターネットを用いて不動産の流通などにおける新たな仕組みの創出を目指す取り組みです。
今回のM&Aや業務提携契約の締結によって、相互顧客における情報発信や不動産テック分野の積極的な活用が期待されています。
株式会社DYMの株式取得による不動産M&A
譲渡企業 | 株式会社エイジアトラスト |
---|---|
譲受企業 | 株式会社DYM |
スキーム | 株式譲渡 |
取引総額 | 不明 |
株式会社DYMは、2021年3月に株式会社エイジアトラストの株式の8割を取得し、子会社化することを発表しました。
株式会社DYMは、WEB広告事業や新卒紹介サービス、人材育成、海外での医療事業など、幅広く事業を展開する企業です。
株式会社エイジアトラストは、オフィス提案などのtoBの不動産コンサルティングや不動産仲介、オフィスマネジメントなどを展開しています。
DYMグループは10,000 社を超えるクライアントを抱えていることから、オフィス移転のコンサルタントや不動産仲介において需要があると勘案し、株式会社エイジアトラストのM&Aに踏み切りました。
今回の子会社化に伴い、クライアントのオフィス拡大・縮小ニーズへの対応や店舗開拓のコンサルトなど、様々な業務への対応を発表しています。
不動産M&Aを行う上での注意点
不動産M&Aを行う上での注意点は以下のとおりです。
- 株式譲渡ではなく不動産の譲渡に該当する可能性がある
- 租税回避行為と見なされる可能性がある
- 簿外債務が発覚する可能性がある
不動産M&Aは、前述したとおり売主・買主の双方において節税効果が見込めます。
ただし、譲渡する不動産の70%以上が所有期間が5年未満の場合、短期所有土地の譲渡とみなされ、株式譲渡に該当しない可能性があります。
その場合には、株式譲渡で発生する税金の約2倍の税率で課税されてしまいます。
不動産M&Aを検討している場合は、株式譲渡の要件に当てはまるかを専門家に調査してもらった上で手続きを進めるようにするとよいでしょう。
また、会社分割による株式譲渡をする際には、組織再編税制の適格要件を満たしていないと租税回避行為と見なされる可能性があります。
さらに、買主側の注意点として、簿外債務の存在が挙げられます。不動産業界は、全産業の中でも自己資本比率が少ない傾向にあります。
自己資本比率が少ないことは、純資産よりも負債が大きいことを意味しており、多額の借金によって不動産を保有している可能性があります。
M&Aの契約締結後に簿外債務が発覚しないためにも、信頼のおける機関に依頼してデューディリジェンス(買収監査)を丁寧に実施するようにしましょう。
不動産M&Aを相談するなら一括見積もりができるM&A相談窓口へ
不動産M&Aを検討している方は、まずはM&A仲介業者に相談すると良いでしょう。
ただし、不動産M&Aの場合は、M&Aの知識のみでなく、不動産においても専門的な知識が必要になります。そのため、不動産M&Aを得意としている仲介業者に相談することが大切です。
以上のことから、まずは気軽に「M&A相談窓口」に相談することをおすすめします。
「M&A相談窓口」では、大手M&A仲介会社を含む数十社と提携しており、事業内容やエリアによるマッチングのみでなく、不動産M&Aを得意としている仲介業者を紹介することができます。
M&Aによる売却金額は、仲介業者の技術や得意領域によって大きく異なります。そのため、1社のみの話を鵜呑みにするのではなく、複数の仲介業者から評価額を見積もってもらうことが重要です。
M&A相談窓口では売却金額が無料で診断できるのみでなく、複数の仲介業者に一括で見積もり依頼することができます。
不動産M&Aを行う際に必要な仲介手数料
不動産M&Aに必要な仲介手数料をM&Aキャピタルパートナーズを例に以下の表にまとめました。
相談料 | 無料 |
---|---|
着手金 | 無料 |
中間報酬 | 成功報酬の10% |
成功報酬 (レーマン方式) |
株式譲渡対価に対する1~5% |
例えば、移動資産総額が20億円でそのうちの負債が15億円、株式価額が5億円の場合は、成功報酬として株式譲渡対価である5億円に手数料率5%をかけた2,500万円が発生します。
手数料の料金体系は仲介業者によって異なるため、納得した上で契約締結するようにしましょう。
【2024年最新】不動産業界のM&Aの事例を紹介
ここでは、不動産業界のM&Aの最新事例を紹介していきます。
2021年、京王電鉄は株式会社タカラレーベン傘下で、富裕層をメインにした分譲事業を強みとする株式会社サンウッドの株式を取得し、資本業務提携をしました。
京王電鉄は、鉄道事業や開発事業を行う企業です。
この提携により、不動産事業の中でも特に分譲マンションの成長を目指します。
出典:不動産業界M&A相談センター