- M&Aを仲介会社に依頼する際、手数料が必要になることが多い
- 必要な手数料として、着手金・中間報酬・成功報酬などがある
- 仲介会社によって必要な手数料は異なるため、手数料を抑えたい場合は複数社を比較検討すると良い
M&Aとは、会社を合併・吸収する形で統合する方法のひとつです。
ただし、仲介を依頼する会社によって手数料や売却額が大きく変動することもあるため、複数の会社に見積もりを貰うのがおすすめです。
M&A仲介手数料の種類まとめ
M&A仲介手数料の種類には大きく分けて以下の7種類があります。以下では、それぞれの手数料について解説します。
相談料
M&Aの仲介を依頼する際の費用として、相談料が掛かるケースがあります。相談料とは、仲介依頼をして契約する前の段階で行う仲介会社への相談の際にかかる費用のことです。
相談料は少額に設定されているケースが多いです。1回につき数千円から1万円程度が相場です。
しかし相談料を無料としている仲介会社も多くあります。例えば、大手仲介会社のM&A総合研究所や、日本M&Aセンター、M&Aストライクなどは、相談料を無料としています。
相談前に相談料について確認しておくことをおすすめします。
ほとんどのM&A仲介会社が現在は着手金や相談料無料で対応しています。おそらく、相談料をとっているところは弁護士法人系の会社だと思われますが、初めは無料のところから聞くことをお勧めします。
着手金
M&Aの仲介を依頼する際に払うことになるのが着手金です。資料作成やマッチング相手探しの手数料として必要となります。
一般的に、仲介会社との契約締結時に支払う場合が多いです。着手金の金額は、会社の業界や規模、依頼する仲介会社によって異なります。
着手金を無料としている仲介会社もあります。例えば、M&Aキャピタルパートナーズでは、着手金が無料となっています。
着手金は基本的に一度支払うと返金されることはありません。そのため結果的にM&Aを行わなかった場合、損をしたと感じてしまう場合があります。M&Aを実施するという見込みが立ってから支払いを行うことをおすすめします。
着手金があって一番規模の大きい会社で言うと日本M&Aセンターです。私の前職でもあり、そのマッチング力は凄まじく、マッチングの可能性が一番高い会社は間違いなくここでしょう。
マッチングに苦労することがなければ、無料のところで問題ありません。
リテイナーフィー(月額報酬)
M&A関連でのリテイナーフィーとは、仲介会社に支払う月額報酬のことを指します。M&Aのマッチングや交渉、手続きに関するサポートへの報酬として支払うことになります。リテイナーフィーを支払うことで、仲介会社からの継続的なサポートを受けることを期待できます。
なお、リテイナーフィーは設定していない仲介会社の方が多いです。例えば、日本M&Aセンターでは、基本的にはリテイナーフィーが設定されていません。
中間報酬
中間報酬は、M&Aの手続きがある程度進んだタイミングで支払うことになる手数料の一種です。支払いのタイミングは基本合意書の締結の後となっている仲介会社が多くあります。
中間報酬の金額は、成功報酬を元に算出されるケースが多くあります。相場は成功報酬の1,2割程度となっています。
仲介会社によって中間報酬の金額には差があり、中には中間報酬が不要(無料)となっている業者も存在します。
また中間報酬を成功報酬の先払いとして扱う業者もあります。その場合成功報酬の支払いの際に、支払い済みの中間報酬額を引いた額が請求されます。
中間報酬はそれまでにかかった役務提供の費用となりますので、M&Aが成約されなくても返還されることはありません。
中間報酬について、様々な意見はありますが、私のM&Aのアドバイザーでしたのでこれがないとかなりビジネスとしては厳しいかなといった印象です。
M&A実行中にかかる費用
M&Aの手続きを進める際に費用がかかる場合があります。代表的なものとしてはデューデリジェンスの際にかかる費用があるでしょう。
デューデリジェンスは、日本語で「買収監査」と呼ばれます。M&Aの契約前に、譲渡企業の資産状況、経営状況などの実態を調査し、企業価値を評価する目的で行われます。
デューデリジェンスは、M&Aを行う際のリスクを洗い出し、購入後のトラブルを回避するという目的もあるため、譲受企業側が行うことが多いです。そのため一般的にはデューデリジェンス費用は譲受企業側が負担することになります。
しかし、M&Aの交渉をスムーズに行うことや、会社の経営を改善することなどを目的として、譲渡側がデューデリジェンスを実施するケースもあります。
業務遂行時に生じた費用
M&Aの際には様々な手続きが行われるため、各種手数料がかかる場合があります。
例えば、登記や事務手続きにかかる費用や契約書の作成にかかる費用などがあります。
費用の種類や金額は、企業の業種やM&Aに用いるスキームなど状況により異なります。具体的な額を知りたい場合、仲介会社に確認してみることをおすすめします。
よく言われるのが、TOP面談の移動費や会食などの実費です。この辺りは、自費で出していただくのが慣例です。
成功報酬
M&A仲介を依頼し成功した際には、成功報酬を支払う必要があります。多くの場合、M&Aの最終契約を締結したのちに支払うことになります。
M&A手数料の内、金額の大部分を占めるのが、この成功報酬である場合が多いです。
成功報酬は、企業の売買金額を元に算出されることが一般的です。以下では、成功報酬の算出方法として多く用いられるレーマン方式について解説します。
M&A仲介手数料のレーマン方式とは?
レーマン方式とは、M&A仲介会社へ支払う成功報酬額の算出方法として多く用いられている方式です。
レーマン方式を用いると、成功報酬はM&Aの際の取引金額に応じて金額が変化します。具体的には金額に応じて報酬料率が異なる仕組みです。取引金額が大きくなるほど、料率は低くなっていきます。
レーマン方式で手数料を求める式は多少複雑なため、注意が必要です。
また仲介会社によって、レーマン方式の算出の際に用いる取引金額の定義が異なる場合があります。そのため、M&A仲介会社と契約する前にこの点を確認しておくことで、トラブルを避けられる可能性が高まります。
以下ではレーマン方式で手数料を計算する際の式について解説します。
「レーマン方式」の起源は無く、なぜ「レーマン」という名称なのかも調べた人もいますが不明です。
業界の慣例で根付いたものにはなるので深い理由はりません。
ただ、企業価値を上げることで仲介会社側の手数料も増える仕組みなので理に適っている計算方法です。
レーマン方式で手数料を割り出す方法
レーマン方式を成功報酬の計算方法としている仲介会社の多くが、報酬割合を以下のように設定しています。
取引金額 | 報酬割合 |
---|---|
5億円以下 | 5% |
5~10億円 | 4% |
10~50億円 | 3% |
50~100億円 | 2% |
100億円以上 | 1% |
上記の表に基づきレーマン方式で成功報酬額を算出すると以下のようになります。
例えば、取引金額が30億円であった場合の例を取り上げると、成功報酬額の計算式は以下のようになります。まず5億円に料率5%を掛けた2,500万円、そして5億円から10億円までの部分である5億円に料率4%を掛けた2,000万円、さらに10億円から30億円までの部分の20億円に料率3%を掛けた6,000万円、これらを全て足した額の7,500万円が報酬額となります。
レーマン方式で手数料を払う際の注意点
レーマン方式で手数料を払う際には、いくつか注意すべき点があります。
まず、手数料の計算の基点となる取引金額の定義が仲介会社によって異なる場合があるため、事前に確認する必要があります。
どの仲介会社の手数料が最も安くなるかについては、会社の負債額などそれぞれの状況に応じ変わるため、一概に言うことはできません。そのため、仲介会社を選ぶ際には、複数の業者に見積もりを依頼することをおすすめします。
また、仲介会社によっては、最低報酬額が設定されている場合があります。そのため、とりわけ規模の小さい会社の場合、取引金額に対する報酬の割合が高すぎるという事態になってしまう可能性があり、注意が必要です。この点も仲介会社との契約前に、確認が必要なポイントと言えます。
加えてレーマン方式での報酬額算出方法は複雑です。そのため計算式の誤解が生まれやすく、報酬額が予想より高いという事態が起こってしまう可能性があります。
トラブルを避けるためにも、契約書をきちんと確認し、報酬に関する認識の齟齬がないよう務めることが必要です。
面談時に確認できればいいのですが、各社仲介会社との面談を設定する時間も、設定後の営業を受けるのも面倒だと思います。M&A相談窓口では最低成功報酬をまとめているページも作成しておりますので、そういったまとめサイトを使うようにしましょう。
M&A仲介会社の手数料・費用の相場
M&A仲介の手数料は、企業の規模や業界など状況によって異なります。以下では、一般的な中小企業のM&Aの際の手数料の相場を紹介します。
手数料の種類 | 相場 |
---|---|
相談料 | 0~数万円 |
着手金 | 数百万円 |
中間金 | 成功報酬の1~2割程度 |
成功報酬 | 取引金額の1~5% |
仲介会社によっては、着手金や中間金などが無料となっている場合があります。また、上記以外に月額報酬などの手数料が設定されている場合もあります。
具体的な額は仲介会社によって、また会社の状況によっても大きく異なるため、見積もりを複数の業者に依頼することをおすすめします。
M&A会社の比較
以下では、M&A仲介会社の設定している仲介手数料について大手3社を比較します。
M&A仲介会社 | 日本M&Aセンター | M&A総合研究所 | M&Aキャピタルパートナーズ |
---|---|---|---|
相談料 | 無料 | 無料 | 無料 |
着手金 | 有料 | 無料 | 無料 |
中間報酬 | 不明 | 無料 | あり |
成功報酬 | 時価総資産額ベースレーマン方式 | 譲渡価格ベースレーマン方式 | 株価ベースレーマン方式 |
(※2024年1月執筆時点)
成功報酬の額を決める方式として、3社共にレーマン方式を採用しています。しかし、計算のベースとなる数値に用いる要素には3社それぞれに違いがあります。
会社の状況によりどの方式が良いかは異なるため、相見積もりを取ることが重要です。
M&A仲介手数料・報酬を低く抑えるポイント
M&A仲介の手数料を抑えるポイントには以下があります。以下では、それぞれのポイントについて解説します。
手数料の相見積もりを行う
相見積もりを行うと手数料を安く抑えられる可能性があります。仲介会社により、手数料の設定が異なるためです。
例えば負債額が大きい会社を売りたい場合、株式譲渡価格ではなく移動総資産額を報酬額の計算の基準としている仲介会社を選んだ方が手数料が安くなる可能性があります。
手数料の計算には様々な条件が絡むため、具体的な額を知りたい場合、実際に仲介会社へ見積もりを出す必要があります。その見積もりの中から一番安い手数料を提示してきた会社に依頼することで、手数料を抑えることが可能になります。
相見積もりを行いたい場合には、まとめて見積もり依頼をすることができるM&A一括見積もりサービスの利用が便利です。
一部手数料が無料に設定された仲介会社を依頼する
一部手数料が無料となっている仲介会社を選択することで、負担を軽くできる場合があります。
例えば、完全成功報酬制を取っている業者であれば、着手金や中間金の支払いが必要ありません。成功報酬を売却金額の中から支払うことができれば、手数料の支払いのための資金を用意する負担が楽になります。
加えて、月額報酬が設定されていない業者に依頼している場合、マッチング相手が見つかりにくいなどM&Aに時間がかかってしまったとしても、報酬額が嵩むことを避けられます。
最低報酬額があるか事前に調査する
最低報酬額を仲介会社との契約前に確認しておくことが大切です。仲介会社の中には、成功報酬の最低報酬額を設定しているものがあります。
比較的小規模なM&Aを行う場合、最低報酬額の設定によっては取引金額に対する報酬額の割合が高くなってしまう可能性があります。場合によっては、会社の売却後に利益がほとんどない、または赤字になってしまう可能性もあるため注意が必要です。
最低報酬額に関しては、仲介会社の公式サイトに明記されていないケースもあるため、問い合わせるなど確認することをおすすめします。
M&A仲介手数料はなぜ高い?
M&A仲介の手数料が高い理由として、M&Aの行程の多さが挙げられます。M&Aに関する手続きや交渉は、専門性が高い上に長期にわたる場合が多く、その分の人件費が嵩みます。
例えば、企業評価、マッチング相手探し、交渉のサポートなど仲介会社の行う業務は多岐に渡ります。これらの業務には幅広い分野の知識や経験が必要になるため、自分の会社のM&Aを一人で行うのは現実的とは言えない場合が多いでしょう。
以下では、M&A仲介会社の行ってくれることについて、また仲介会社を利用するメリットについて解説します。確認することで、高いと感じる手数料にも納得感が得られる可能性があります。
M&A会社の役割・業務
M&A仲介会社が行ってくれる業務には以下のものが挙げられます。
- マッチング相手探し
- 企業評価額の見積もり
- 買い手企業との交渉のサポート
- 契約書など各種書類作成のサポート など
例えば仲介会社にマッチング相手探しを依頼すれば、自分で買い手企業を探した場合よりも広いネットワークの中から買い手を探してもらえる可能性が高いです。
多くの方にとってM&Aは初めての経験となるため、専門的な知識や経験を活かしたサポートを仲介会社から受けることは、多いに役立つでしょう。
M&A会社を活用するメリット
M&A仲介会社を活用するメリットとして、以下のものが挙げられます。
- マッチング相手を広いネットワークの中から探してもらえる
- 交渉のサポートを受けることによって不利な条件で契約が進んでしまう事態を避けやすい
- 契約書など作成に専門的な知識が必要となる書類の作成をサポートしてもらえる
- 普段の業務をこなし続けられる など
例えば、M&Aに知見がない場合、交渉の際に会社を買い叩かれてしまうなど不利益を被ってしまう可能性があります。M&A仲介会社のサポートを受けていれば、そのような事態を避けられます。
加えて、手続きや書類作成などのM&Aに関係する業務をできるだけ仲介会社に任せることで、普段通りの業務とM&Aを並行して行うことができる可能性があります。
以上のように、M&A仲介会社を利用することでM&Aを円滑に進められる確率が上がります。
M&A会社の選び方・注意点
M&A会社を選ぶ際に意識したいポイントとして、以下のものが挙げられます。
- 自社の業界に詳しいかどうか
- 受けたいサポートと仲介会社のタイプが合っているかどうか
- 手数料や報酬は幾らになるか など
M&Aでは、企業の業界によって関連する法律や用いるスキームなどに違いが出る場合があります。
そのためM&A会社を選ぶ際には、自社の業界に詳しいアドバイザーが在籍しているかどうかを確認することをおすすめします。仲介会社の公式サイトなどで公開されている仲介実績を確認することで、その業界関連のM&Aの経験があるかどうか調べることができます。
また、M&A会社は大きく分けて、「仲介型」と「FA型」の2種類があります。
仲介型の契約であれば、中立の立場で交渉のサポートを行ってくれるため、比較的早期に交渉がまとまりやすいというメリットがあります。
FA型の場合、自社側のアドバイザーとして相手方と交渉を行ってくれるため、自社の利益を優先した交渉を行ってくれるというメリットがあります。
双方にメリットデメリットが存在するため、自社の状況に合う仲介会社のタイプを選択する必要があります。
M&A会社を選ぶ際には、自社の規模や状況を考慮した上で、複数の候補を比較して選ぶことが重要です。
【結論】M&A会社は自社に合った会社を選ぶのがおすすめ
M&A会社を選ぶ際には、自社の状況に合う会社を選択することが重要です。M&A会社によって得意分野などの特徴が異なるため、それぞれの会社によってぴったりなM&A会社が違います。
手数料が高いか安いかもM&A会社を選ぶ際のポイントです。しかしそれ以上に、自社の状況にあったサポートをしっかりと行ってくれることや、希望に沿った形でM&Aを進めてくれることが重要となります。
自社の規模や状況に合ったM&A会社を選ぶためにも、各社を比較し検討することがおすすめです。各社を検討する際、M&A一括見積もりサービスを利用することで、情報の入力などの手間を減らすことができて便利です。
M&A仲介手数料に関するよくある質問
M&A仲介手数料は誰が払う?
M&A仲介手数料は、基本的に売り手側企業と買い手側企業の双方が支払います。手数料を支払うタイミングや料金に関しては仲介会社によって異なります。
M&A仲介手数料は経費になる?
M&A仲介手数料は経費や損金として計上できます。
手数料の支払いのタイミングによって処理の方法が異なります。基本的に成功報酬はM&A対価に加算して計上するため、経費となります。
手数料の高いM&A会社に仲介を頼む利点は?
M&A会社の持つ強みに魅力を感じる場合、手数料が高かったとしても依頼する価値があると言えます。例えば、M&Aマッチングのネットワークが広ければ、より良い取引相手が見つかる可能性が高まります。
目先の手数料の多寡以上に、長い目で見て自社にとってメリットとなり得るM&A会社を選択することが重要です。