M&Aの売却価格の計算方法は?算定・算出方法を解説
本記事のまとめ
  • M&Aの際の売却価格は、原則的に売り手と買い手の交渉によって決定される
  • その計算にはインカムアプローチやマーケットアプローチなどの各方法が利用される
  • 計算には専門的な知識が必要になるため、M&A仲介会社を利用することがおすすめ

M&Aの仲介業者は多数存在しており、得意業界やエリアが大きく異なります。

そのため、どの会社に依頼するのかでM&A成功や売却額に大きく影響しやすいことから、複数の会社で見積もりをとってみるのがおすすめです。

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M&Aの売却価格の計算方法は?金額の算出方法について紹介!

M&Aの際の売却価格は、原則的に売り手と買い手の交渉によって決定されます。

両者の交渉を円滑に行うため、以下のような方法で売却価格の目安が計算されます。

上記の計算方法の内、どの方法を用いるかは、個々の企業の状況やM&Aの目的によって異なります。そのため、M&Aの売却価格の目安の一概に算出は難しいです。

適切な計算方法を選択するため、M&Aの売却価格を計算したい場合にはM&A仲介会社に相談すると良いでしょう。

下記では、それぞれの計算方法について解説します。

山本正樹
山本正樹/M&Aアドバイザー【記事監修者】

中小企業のM&Aの場合は、半数以上がコストアプローチを用います。次に多いのがマーケットアプローチです。
インカムアプローチと言われている方法は、上場企業の理論価値を算定するときなどに用いる方法なので数としては少ないものになります。

インカムアプローチ

M&Aの際に売却価格を計算するための方法の一つがインカムアプローチです。インカムアプローチとは、その会社が将来生み出すと見込まれる利益に着目して会社の価値を計算する方法です。

インカムアプローチの代表的な手法として、DCF法や配当還元法が挙げられます。以下では、この2つの手法について詳しく解説します。

インカムアプローチ
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DCF法

DCF法とは、インカムアプローチの一種である「ディスカウントキャッシュフロー法」の頭文字を取った略称です。キャッシュフローを現在の価値に計算しなおすことで、会社が将来的に生み出すと期待される利益を計算します。

DCF法は、会社や事業の将来的に生み出す利益に着目して計算します。そのため、会社や事業の将来性を価値として売却価格に含めることができる点がDCF法のメリットと言えます。

反面、確実性の薄い将来性という部分に着目していることから、計算結果にばらつきが出やすいというデメリットを持ちます。DCF法を用いて、適切な売却価格を算出するためには、専門的な知識を必要とすると言えるでしょう。

山本正樹
山本正樹/M&Aアドバイザー【記事監修者】

DCF法は、上場会社の株式価値を算定する際に用いられることが主です。また、ストックジビネスである不動産や太陽光などもこの方法で使われることがあります。不動産の価値算定に用いられる収益還元法は、DCF法と考え方は似ているものになります。

配当還元法

配当還元法とは、非上場の株式の価値を算出することで、企業の価値を計算する、インカムアプローチの一種です。配当還元法では、非上場の株式の配当金額から企業が将来的にどれだけの利益を生むかを予測します。

非上場企業の株価を算出できるという点でメリットのある手法です。また、配当という客観的な数値を元に計算を行うため、納得感のある結果が出やすい点もメリットです。

しかし、配当金額は企業の戦略などにより上下する場合があります。そのため、配当金額が企業の実態を正確に表す数値として相応しいかどうかは、状況によって異なります。また、配当がない企業もあり、この手法を使うことができない場合もあるでしょう。

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マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、M&Aの際に売却価格を計算するために用いられることのある手法の一つです。マーケットアプローチでは、市場の先例を元に会社の価値を算出します。

マーケットアプローチは上場企業に対し用いられることの多い手法ですが、中小企業に対して用いる場合もあります。

マーケットアプローチの代表的手法として、類似取引比較法や類似会社比較法が挙げられます。以下では、それぞれの手法について詳しく解説します。

マーケットアプローチ

類似取引比較法

類似取引比較法とは、M&A市場において過去の取引の事例から、似た業種・状況の会社の売却価格を調べ、その価格を基準として、会社の売却価格を計算する手法です。

類似取引比較法のメリットとして、実際のM&A事例を参考とするため、買い手と売り手双方にとって納得感のある計算結果が出やすい点があります。

しかし、M&Aの際の売却価格は、会社の状況や取引の目的など記録に残らない点も含め、様々な要素を考慮して決定されるものです。そのため、似た業種の会社であっても売却価格は大きく異なる場合があります。

そうしたズレを減らすため、できるだけ多くの事例を調べ、その平均値を基準値として扱うことが望ましいでしょう。

山本正樹
山本正樹/M&Aアドバイザー【記事監修者】

類似取引比較法は、実際の業界のポテンシャルを反映した株式価値が出ます。反対に、個々の強みなどは数値には反映されません。コストアプローチの金額感に納得いただけない場合などは、この方法が使われることがあります。

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類似会社比較法

類似会社比較法とは、評価対象の会社と業種や状況が似ている企業を上場企業の中から探し、その企業の株価を基準値として評価対象の会社の価値を計算する方法です。

全く同じ状況の会社はないため、一般的には複数の上場企業を比較対象として選び、その平均値を基準値として扱います。

上場企業の株価は、市場の取引価格をリアルタイムで反映しているため、客観的で時価に近い計算結果が出やすい点が、類似会社比較法のメリットです。

しかし、類似会社比較法は独自性の強い会社の売却価格を算出することには向いていません。状況の似ている上場企業を探し出すことが困難なためです。

コストアプローチ

コストアプローチとは、会社の純資産額に着目して、会社の売却価格を計算する方法です。純資産とは、資本金や自己株式など、返済義務のない資産のことをいいます。純資産額の総額は、資産額から負債を引いた額と同じです。

コストアプローチは、計算方法が比較的シンプルなため、中小企業の売却価格の目安を知るために使いやすい方法です。

コストアプローチの代表的な手法として、時価純資産法や簿価純資産法があります。以下では、それぞれの手法について詳しく解説します。

コストアプローチ
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時価純資産法

時価純資産法とは、会社の純資産額を時価に計算し直して、会社の価値を算出する手法です。不動産や有価証券などの価値の変動しやすい資産を重点的に時価評価します。

時価評価を行う点から、コストアプローチの中では適切な価格を出しやすい特徴があります。

しかし、時価純資産法では会社ののれんや将来性といった部分の評価を行いません。そのため、実際のM&A取引の際に、時価純資産法を用いて算出した計算結果をそのまま売却価格とするのは現実的ではない場合が多いでしょう。

より適切な金額を算出するため、時価純資産額に営業権(のれん)の額を足した金額を、売却価格の目安として扱う場合があります。のれんとは、ブランドや認知度など企業が利益を出す原動力となる無形資産を総称した物です。

山本正樹
山本正樹/M&Aアドバイザー【記事監修者】

中小企業のM&Aでは、この方法が最もオーソドックスな算定方法になります。中小企業の半数以上はこの方法が使われます。

簿価純資産法

簿価純資産法とは、貸借対照表の簿価をそのまま用いて会社の純資産額を計算し、会社の価値として扱う手法です。

簿価の数値を用いて、資産額から負債を引くだけで計算ができるため、簡単でわかりやすいという利点があります。

しかし、多くの場合資産の簿価と時価では大きく差があるため、会社の実情を適切に表す数値が出るとは言い難い手法です。そのため、簿価純資産法をそのままM&A取引の際に用いるケースは多くありません。あくまで、会社の売却価格の目安を知りたい場合に、簡易的に用いることのできる手法であると言えるでしょう。

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M&Aの売却価格の交渉方法

M&Aの際には売却価格を交渉によって決定します。交渉方法として、以下の2種類があります。それぞれについて解説します。

買い手との個別の相対交渉

M&Aの際には、多くの場合買い手との間で個別に価格交渉を行います。

M&A仲介業者を利用している場合には、業者が間に立って交渉のサポートを行ってくれます。

当社間同士で互いに納得のいく数値が出れば、交渉が終了するため、比較的短期間で終わらせることができる可能性があります。また、情報を開示する交渉相手を増やさないことで、情報漏洩のリスクを低く抑えられます。

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複数の買い手候補による入札方式

M&Aの価格を入札方式で決める場合があります。入札方式を行うことで、できるだけ高額で会社を売却することができます。

しかし、複数社と同時に交渉を行うことになるため、かかるコストや手間が増えてしまうことがデメリットと言えます。情報を開示する相手が多くなるため、それだけ期間が長引くことがデメリットと言えるでしょう。

M&Aの売却価格の計算における注意点とは?

M&Aの売却価格を計算する際に注意すべき点として、以下のものが挙げられます。

M&Aの売却価格に相場は存在しない

​​M&Aの売却価格を計算する際、相場が存在しない点に注意が必要です。M&Aの売却価格は、様々な状況を考慮した上で交渉によって決められるものであるためです。さらに、タイミングによっても売却価格が異なる場合があります。

売却価格の目安を知るための計算方法は幾つかありますが、実際の売却価格はそれより高くなる場合も低くなる場合もあるでしょう。高望みをしてしまい買い手が現れない事態や、安く買い叩かれてしまう事態などのトラブルが生じ得ます。

このようなトラブルを回避するためにも、M&A仲介業者などの専門家に売却価格について相談することをおすすめします。

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M&Aの目的や事業の規模・業種から適した計算方法を用いる

M&Aの売却価格を計算する際には、自社のM&Aに適した計算方法を用いることが重要です。

計算方法は複数あり、それぞれにメリットやデメリットがあります。M&Aの目的や自社の業種・状況によって適切な計算方法は異なります。

例えば、立ち上げたばかりで、資産は多くないが将来性の期待できる事業を抱えている場合、将来性について着目して計算を行えるインカムアプローチを用いることが適切な可能性があります。

適切な計算方法を知りたい場合、M&A仲介業者などに相談すると良いでしょう。

数値に表せない企業の価値も売却価格に含まれる

M&Aの売却価格には、数値に表せない企業の価値も含まれる点に注意が必要です。例えば、営業権(のれん)は簿価などの数値に表すことが難しい要素の一つです。営業権には、知名度や信用度などが含まれるためです。

M&Aを行う際には、営業権など数値化できない企業の価値も、重要な交渉の材料になり得ることを意識しておく必要があります。

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自社の価値を根拠を持ってアピールする

M&Aの売却価格の計算を行う際には、自社の価値を根拠を持ってアピールすることが大切です。

例えば、は交渉相手にとって評価が難しい要素と言えます。無形資産とは、技術力や営業権、人材など簡単には金額に換算できない形のない資産のことを指します。

無形資産のような自社の見えにくい価値について、根拠を持ってアピールできれば、売却価格の上昇につながるでしょう。

自社の価値を根拠を持ってアピールするためには、まず自社について深く知ることが重要です。そのためにデューデリジェンス(買収監査)を自社に対して行うケースもあります。

自社の価値を高く評価してくれる買い手と交渉する

M&Aの売却価格をできるだけ高くするため、自社に高い評価をつけてくれる買い手と交渉することが大切です。買い手によって、企業価値の評価は大きく変わる場合があるためです。

例えば、自社とシナジー効果を期待できる事業を行う買い手との交渉であれば、その点を強みとして売却価格に加算できる可能性があります。

自社に高い評価をつけてくれる買い手を探すためには、買い手候補を多く見つける必要があります。M&A仲介業者に依頼することで、条件の合う買い手を見つけてもらいやすくなるでしょう。

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M&Aの譲渡価格に影響を与える要素

M&Aの譲渡価格に影響を与える可能性のある要素として、純資産と競争優位性、将来の利益見込みの3種類が挙げられます。これらの要素のうちどれを重視して金額を決定するかは、用いる企業価値計算方法によって異なります。

純資産とは、会社の持つ返済義務のない資産を指します。競争優位性とは、形のない資産で金額に簡単には換算できない資産です。競争優位性の例として以下のものがあります。

  • 従業員
  • 顧客
  • 市場シェア
  • 技術力
  • ブランド力

また上記以外の要素として、M&Aの目的やタイミングも売却価格に影響を与える可能性があります。

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M&Aの売却価格の計算に関するよくある質問

株主価値と事業価値とは?

株主価値とは、企業価値から負債を差し引くことで計算できる株主に帰属する価値のことを指します。企業価値は、事業価値と非事業価値の合計額です。

事業価値とは、事業活動によって生じる価値を指します。事業価値には、事業に関係する純資産や営業権などの無形資産が含まれます。

非事業価値とは、現預金や有価証券額など事業に関係しない企業の資産の価値を指します。

売却価格の計算を行うのは誰?

M&Aの際の売却価格の計算はM&A仲介会社に行ってもらうことが一般的と言えます。

基本的に中立の立場をとる仲介会社が計算することで、売り手にとっても、買い手にとっても納得感のある計算結果が出やすいと言えるでしょう。また、M&A仲介会社はM&Aに関する専門的な知識と経験を持つため、適切な売却価格を提案してくれることを期待できます。

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自由に会社の売却価格を計算することは可能?

自由に売却価格を計算することは、不可能ではありません。M&Aの売却価格は最終的に買い手と売り手の交渉によって決まるため、買い手に納得してもらうことができれば、計算方法は自由であると言えます。

しかし、現実的には計算の根拠を示さなければ、買い手に納得してもらうことは難しいでしょう。交渉を円滑に行うため、本記事上部で述べたような価格算定方法を用いることが一般的となっています。

この記事の監修者
この記事の監修者
山本正樹
M&Aアドバイザー
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プロフィール
新卒で日本M&Aセンターに入社。そこから同業のベンチャーに転職して業界に4年間在籍。譲渡企業側の相談を多数経験。業種は拘らずに金融機関や士業等からの紹介が中心。
監修者の身元
専門ジャンル
M&A
この記事を書いた人
この記事を書いた人
「M&A相談窓口」ライティング部門